計画を立てる
計画を立てずに気分気ままに旅をするというのは、自由に動ける分、とても楽しいものです。しかし、自由気ままに旅をするにはどうしてもそれ以前に計画をきちんと立てた旅で経験を積む必要があります。
国内ならば経験なんて要らないと思われるかもしれませんが、見知らぬ土地では、国内外を問わず、いつ何時、不測の事態が起こらないとも限りません。そのときに有効になるのは旅の経験です。経験がなければ、万が一のときに慌てて何も出来ないという可能性もあります。
ぜひともこのページをじっくり読んでいただき、計画を立てる楽しさ、ひいては不測の事態に対処するための基礎を知っていただければ幸いです。
項目を書き出す
計画を立てるにあたって検討しなければならない項目があります。
まず行き先です。
次にメンバーがあります。
それから行程と交通手段。
最後に宿です。
実際に次の項目から、この順番で九州旅行の検討をしてみましょう。
注. 検討するにあたってここでは、JTB時刻表2004年8月号および「るるぶ九州′04~′05」(JTB)を使用し、そこでの記述を前提に構成を進めていきます。ただし、もちろん、今、お手元にある時刻表とガイドブックもしくはムックを使用していただいても大差はないと思います。
行き先を決める
行き先は重要な1項目です。これが決まらないと何も出来ません。
この場合は九州旅行ですから、九州という具体的な行き先が決まっています。
しかし、九州のどこへ行くかは決めていないですね。とりあえず福岡へ行ってそれから気まぐれで決めるというのもいいですが、第2章の冒頭でも述べましたように最初のうちはきちんと行き先を決めたほうがよいと思います。
ガイドブックスで検討し、稲佐山から望む夜景といま話題の芋焼酎が気になりました。そこで、長崎と鹿児島・宮崎をメインにした旅にすることにしましょう。
メンバーを決める
メンバーをどうするかというのは意外と見落としがちですが結構重要な問題です。一人旅や二人旅ならさして問題はないのですが、これがグループになると大変な問題となってきます。
例えば、原さんと堀内さんと清原さんと江藤さん(なんかどっかで聴いたことのある名前ですが)とあなたがいたとします。あなたが全員と仲がよくても、もしかしたら原さんと堀内さんは上司と部下でもめた仲かも知れません。清原さんと江藤さんは実は役職地位の問題で対立しているかもしれません。
メンバー選択はそれぞれきちんと打診をした上で決めないと(日本的根回し)あとあと、問題が生じて旅全体が暗転しかねません。くれぐれもメンバー選択は慎重かつ迅速に。
あと、一緒に行く人数は奇数よりは偶数のほうが快適です。電車も飛行機もおおよそ座席が分れている乗り物は偶数席が基本です。また、車にしても偶数のほうが、前と後ろで話ながら行けていいですよね。3人だとどうしても後ろの人は前に乗り出して話すようになりますし、セダンか何かの場合5人は後ろがきつくなります。そういう意味では4人ぐらいが、座席や人間関係など、あらゆる面から見て規模としては無難と言えます。
今回の九州旅行の例では、大学の仲良し4人組が行くということにします。
行程をラフデッサンする
いよいよ、行程と交通手段です。
旅へ出るにあたって、まず、ラフデッサンをします。ここへこれで行って、そのあと、これでここへ行って、それから……というものです。
今回の場合、九州ですから、やっぱり飛行機という選択肢になるでしょう。でも、九州新幹線にも乗りたいし、鹿児島で焼酎の蔵元を訪問するにはレンタカーを借りる必要もありそうです。
もちろんラフデッサンですから、とりあえずの費用や日程的な面などは無視してある程度現実的な希望の範囲で概略を決めていきます。はじめから費用や日程のことばかり考えていると計画自体が矮小なものになりますし、何より、楽しくないですよね。
きっぷの予約・発売開始
具体的な計画に入る前に注意点を。皆さんは交通機関の予約がいつ頃から始まり、どこで買えばよいかご存知ですか?
まず、飛行機。これは2ヶ月前の同じ日に発売されます。購入場所は旅行代理店のほか、最近では東京メトロの定期券売り場やJRみどりの窓口でも購入できるようになっています。もちろん、空港・飛行場の航空会社の窓口、そして意外と見落とされがちなのが、航空会社が独自に開いている町中の支店・営業所でも買えるということです。支店や営業所は主要都市にあり、詳しい場所は各会社が出している時刻の載った小冊子に掲載されています。
みどりの窓口は扱いにいまいち不慣れですし、旅行代理店は航空券だけの購入にはあまりいい顔をしない(最近、よくなってきました)ので、買えるようであればそうした支店・営業所・空港窓口で買ったほうがいいでしょう。金券屋での購入も出来ますが、それについては別の機会に書きます。
次に鉄道です。JRは1ヶ月前の同じ日からの発売です。ただし、夜行列車の場合は始発駅を出る日の1ヶ月前からの発売です。つまり、乗る日が2日の0時2分であっても、その列車が1日の23時59分に始発駅を出る場合は、1ヶ月前の1日に買えるということです。発売場所はJRみどりの窓口か旅行代理店。ただし、旅行代理店での購入は愛想が悪い上に手際が非常に悪いことが多いので、注意です。民鉄の特急券も同様です。ただし、小田急は6ヶ月前、近鉄は3ヶ月前です。
バスは1ヶ月1日前発売が通常です。あらかじめ予約さえしておけば、購入は当日でよいことも多く、また、翌月分を1日に一斉発売したりしてしまうところなどもあるそうです。
最後は宿です。宿は基本的にいつから予約ということはありません。逆にいえば、いつでもかまいません。国民宿舎などの公共の宿は制限を設けているところが多いので、要注意です。具体的な期間などについては後で書きます。
こうしてみると、旅の計画は3ヶ月くらい前から立てたほうが無難なようですが、実際には早割を使うなどといった場合を除いて、2-3週間前までに固まっていれば大丈夫です。もちろん、お盆や年末年始といった旅行者の多い時期(多客期)は除きますが。
具体的計画へ
概略ではまず、飛行機で九州へ入ることにしていました。長崎は西の端、鹿児島は南の端、宮崎は東南になります。どこからどう入って、巡るのかは結構重要な要素です。
ガイドブックを見てみると九州新幹線が運行されているようです。焼酎も夜景もやはり夜に楽しむものでしょうから、それぞれの街へ滞在する必要があります。
このように考えていくとまず長崎空港へ飛んで、市内の名所を見学、チェックインしたあと、新地中華街でチャンポンを食べ、そのまま夜景を見るというのが流れとしては良さそうです。
長崎は特急で発ち、新鳥栖で鹿児島方面の新幹線へ乗車、鹿児島中央に着いたら駅周辺を見学して、チェックイン。夜は天文館で本場の芋焼酎を楽しむとしましょう。
……とこのように予定を立てていきますと期間の問題が出てくるわけですが、それについては次節で解説いたします。
期間の決定方法
そろそろ、具体的な計画の前に期間はどうなったの、とか、あれ期間の話が出てこないぞ、と思われた方もあるかもしれません。別に忘れていたのではなく、ここからがその期間を決定する重要なところなのです。
普通、皆さんは先に期間ありきで予定を立てていませんか。5日間休みが取れそうだからとか、8日間くらい行っていようかなとか。
でも、ちょっと待ってください。そうすると、本当は3日間がちょうどよい旅でも無理に引き伸ばすことになったり、逆に1週間くらいまとめていったほうがいいのに無理に縮めたりすることになります。
ですから、はじめに期間を頭において旅の行程を考えるのは避けてください。いくつか旅の案を作り、その上でその時の予定にあうプランをチョイスするのです。
時間がないというあなた。あの机上旅行のプランはここで生きてくるんです。何回か机上旅行をしていれば、結構な数のプランが既に出来たことになるのです。旅へ出たいけどプランを立てる余裕がない時は、机上旅行のプランへ肉付けすれば、それでもう十分な旅の計画が出来上がることでしょう。
もちろんあくまで理想でして、必ずしもこのようにいくとは限らないですし、私もそのような旅を必ずしているわけではないですが、このことを知っているのと知らないのでは旅への考え方が変わってくるので紹介してみました。
どうしても日程がかぎられていて、いきたいところがある、今回の実例のような場合は、どうするか。この場合は先に全行程を決定してしまいます。もし、日程をオーバーするようならば、切ってもよいところを1日ずつ削っていきます。
こうすれば、本当にいきたいところも厳選できるし、日程にも合わせられます。
広い街をまわる計画の立て方
観光地って、いろいろな名所がありますよね。こういう名所の多い街をめぐる時はどうするか。
ブックからリストアップし、優先順番を決めます。その際、休館日や時間限定のイベント(たとえば稲佐山の夜景なら夜がいいとか)はきちんと注意書きを書いておきます。その上で、後の行程を決定し、1つ前に書いたように具体的日数へおさめます。
今回の場合は例えば、長崎では1日しか取れず、すべて開館していて、以下のような優先順番をつけたとしましょう。
●長崎
- 夜景……夜じゃなきゃだめ
- 新地中華街……意外と狭い
- 原爆資料館……ここはじっくり
- 平和公園・爆心地(グランドゼロ)
- グラバー園……駆け足でもよし
- 崇福寺
- 大浦天主堂
- 出島
- 孔子廟
- 卓袱料理……ちょっと高いけど
- オランダ坂
- 長崎市電
この場合、当然稲佐山は夜に登ればよく、かつ、夜限定のイベントはほかにはないので、優先順番の通り決定します。また、新地中華街は食事がてらまわることにします。
次に場所ですが、3.原爆資料館と4.平和公園は浦上にあり、長崎の中心部からは少し離れています。
5.グラバー園と7.大浦天主堂と9.孔子廟と11.オランダ坂、2.新地中華街と8.出島はそれぞれ近くにあります。13.長崎市電は長崎市街地から浦上のほうへ向かう時にでも乗ればよいでしょう。卓袱料理は思案橋付近の料亭で食べたいのでオランダ坂と新地中華街の中間地点くらいにあります。
これを踏まえた上で、ガイドブックの必要時間を考慮しつつ、回る順番を決定します。
●長崎をまわる
長崎空港-長崎県営バスでグラバー園直行-大浦天主堂-孔子廟-オランダ坂-新地中華街付近のホテルを予約しておいてチェックイン-新地中華街で遅めの昼食-市電で原爆資料館-平和公園・爆心地-市電で思案橋-丸山の料亭で卓袱-タクシーで稲佐山(夜景)-タクシーで宿へ戻る
(翌日)
宿-出島付近を散策-長崎駅
もちろんあまりにゆっくり見学していると後を回る時間が減りますが、そのあたりは「経験」と「勘」なので、これはもう体でおぼえるしか、残念ながら、ありません。
計画を自分で立ててみよう
この後は、鹿児島から宮崎を回って宮崎空港へ行き、飛行機で帰ってきます。これらもすべて同じ考え方でかまいません。長崎の応用です。時刻表を使って特急や飛行機を組み合わせていきます。すべてをまわる行程をたてたあとで、日数にあわせるという方法もすでに解説しました。
この後の具体的な計画は自分でたててみてください。自分でして見ないとその苦労や疑問点は分からないと思います。
計画にそってきっぷの手配や宿の手配をするわけですが、こちらはそれぞれのページで包括的に説明しています。